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     リファレンス・ディスク(クラシック編)
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投稿者 スレッド
管理人K
投稿日時: 2008/3/21 1:51
管理人
登録日: 2007/12/10
居住地:
投稿: 1907
リファレンス・ディスク(クラシック編)
リファレンス・ディスクのご紹介。
今回はクラシック編です。
最初にお断りしておきますが、私は演奏家でも音楽評論家でもありませんので、演奏的な内容のご説明は詳しくは出来ません。
私がこれまで様々な演奏会などに行った経験上、質感や空間表現など音質的に参考になると判断したディスクの音質とチェックポイントを中心にご紹介させて頂きます。

Skip Sempe 「Louis Couperin」


フランスの作曲家フランソワ・クープランのクラブサン(チェンバロ)曲集です。演奏はスキップ・センペでパリの礼拝堂にて録音されたそうです。
瑞々しい音色、明晰な基音と倍音の分離と融合など、チェンバロ録音の最高峰だと感じます。
ノイズや歪み、付帯音が絡んだシステムですと、この瑞々しいチェンバロの音色がザラザラした質感に成り果ててしまい、基音と倍音も分離が悪く混濁して、空間に広がる余韻も聴き取り難くなってしまいます。
いかに心地良い音色と響きで楽しめるかがポイントになるディスクです。

Noriko Ogawa 「Debussy Piano Music Volume2」


小川典子さんのドビュッシーのピアノ曲集です。
これはあるクラシックファンの方の御宅で聴かせて頂いて知ったディスクで、女性でありながらパワフルで迫力ある演奏に圧倒されます。
音質的にもクラシックにおけるピアノ録音として理想的なもので、
コンサート会場でいうと、S席など少しステージから離れた位置からピアノ演奏を望む感じで豊かで広大な空間情報や空気感、ホール感はもちろん、エネルギー感や繊細なニュアンスまでも克明に録らえた素晴らしい録音です。
ノイズや付帯音、歪みが発生しているシステムでは、本当の倍音情報や空気感が再現出来ず、ホールの高さや奥行き、広さなどが再現出来ませんし、ピアノは最強打時に激しく混濁して艶や質感なども
出てこなくなってしまいます。

Naoko Yoshino 「Baroque Harp」


邦題「グレイス〜パッヘルベルのカノン」吉野直子演奏のハープによるバロック曲集です。
ハープはオーディオにおいて、録音も再生も最も難しい楽器として知られています。
非常に雄大に広がる倍音を録らえるのが難しいためだと思いますが、確かに豊かな倍音を録られ切れず基音しか録られてないような
ソフトではハープではなく、琴や三味線のような音色になってしまっているものも少なくありません。
実際のハープ演奏を体験された方ならば判ると思いますが、全身を包みこむような豊かな倍音に圧倒されます。
その点でこのディスクも完璧ではありませんが、現在市販されているハープ録音のディスクの中では最も克明にハープの倍音や瑞々しく艶やかな質感を録らえたディスクと言えると思います。
位相特性がきちんと整ったシステムではハープの豊かな倍音がスピーカーの左右、上方のみならず、リスナーの周囲まで届くのを感じ取れるはずです。
逆に位相が狂ってノイズや付帯音、歪みまみれのシステムでは倍音が広がらないどころか、ぐしゃぐしゃに混濁した荒れた音色で聴くに耐えない音と質感になってしまうでしょう。

Carmignola/Venice Baroque Orchestra 「Concerto Veneziano」


ジュリアーノ・カルミニョーラとベニス・バロック・オーケストラによるベネチア協奏曲集です。
私はある方のご好意で、池袋の芸術劇場にてこの人達の演奏を前半、後半で場所を変えて聴く事が出来ました。
前半は離れた位置から、後半はゴンドラ席でほぼ真上から聴く事が出来たのですが、弦楽器群の音が上方に向かって延びる特性があるのを体験する事が出来ました。
よくクラシックの録音時にマイクをかなり上方に設置して、下に向けて録る光景を見た方も多いかと思いますが、それはこの弦楽器群の上方へと延びる音の特性からだったのだと妙に納得したものです。
音質的なチェックポイントは「質感の高さ」と「ほぐれ感の良さ」に尽きると思います。
ノイズや付帯音、歪みなどがあるシステムではバロックヴァイオリンの質感が極めてギスギスとした質感が悪く刺激的なものに成り果て、「ほぐれ感」も悪くなり、弦楽器群が固まって混濁してしまい
開放的な気持ちよさを感じられなくなってしまいます。

Jacques Zoon Boston Baroque 「Mozart Flute concertos etc」


マーティン・パールマン指揮ボストンバロック、ジャック・ズーン(フルート)によるモーツァルト・フルート協奏曲第一番・二番と
交響曲41番「ジュピター」です。
素晴らしいのはフルート協奏曲の両曲で、極めて自然な形で収録された好録音です。
一番、二番で録音バランスは多少異なりますが、どちらも非常に暖かく穏やかで木質感を感じるフルートの音色と質感、そのフルートとの距離感が抜群に良く、配置が克明に見通せる奥行き豊かなオーケストラが特徴になります。
質感が悪いシステムでは、このフルートの素晴らしい音色や質感が
出せませんし、位相特性の悪いシステムではフルートとオーケストラの距離感や奥行き感が出て来ないでしょう。

Hilary Hahn 「Paganini Violin concerto No.1, Spohr Violin concerto No.8」


大植英次指揮スウエーデン放送交響楽団、ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)によるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番と第8番です。
実際に演奏会で聴くよりもヴァイオリン音像は少々大きくクローズアップはされていますが、圧倒的な奥行きでパワフルなオーケストラとの距離感など、オーディオ的には極めて理想的な配置のディスクと言えると思います。
ヴァイオリン協奏曲第1番は庄司紗矢香の演奏をS席よりも少々手前のステージの中心にて聴いた事があるのですが、その時の印象と非常に近い音の聴こえ方を感じます。
ポイントはヴァイオリンの質感や演奏のニュアンス、オーケストラの豊かな奥行き感やパワフルな低域の再現性です。
どのようなシステムにおいても比較的良い音で鳴ってしまう優秀録音ですが、艶やかで瑞々しいヴァイオリンの質感は、ノイズや付帯音が絡んでいては出せませんし、オーケストラの深い奥行きや低域の沈み込みは、位相特性や周波数レンジが確保されたシステムでないと本当のカタルシスは感じられないと思います。

Lang Lang 「Rachmaninov Piano Concerto No.2 etc」


ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団、ランラン
(ピアノ)によるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とパガニーニの主題による狂詩曲です。
このディスクもピアノとオーケストラの距離感やバランスが抜群で
協奏曲として極めて理想的なバランスを感じます。
ピアノは非常に低い帯域まで録らえられており、ステージの床の共振まで生々しく再現されます。
またゲルギエフの演奏も他の盤でよく感じる、迫力はあるががさつで大味な印象がなく、非常に緻密で細部まで克明に収録された素晴らしい録音となっています。
個人的には同時期に発売された小澤征爾とクリスティアン・ツィマーマンの同曲よりもずっと高音質・好演奏だと思います。
ノイズや付帯音、歪みの多いシステムではピアノの強打時に著しく混濁してしまい、位相特性の悪いシステムではオーケストラとの距離感や奥行きが出て来なくなり、全体にがさつな印象の演奏に聴こえてしまうでしょう。

Gunter wand 「Debussy&mussorgsky」


ギュンター・ヴァント指揮・北ドイツ放送響によるムソルグスキーの展覧会の絵(ラヴェル編)とドビュッシーの交響的断章「聖セバスティアンの殉教」です。
優秀録音が多く輩出される展覧会の絵ですが、このヴァント盤はその中でも最も自然でリアリティに富んだ録音になると思います。
ライヴ録音のようですが、非常に高S/N比で濁りが少なく明瞭で、
観客の咳払いや気配なども怖いくらいに克明に収録されているため、逆にリアリティを増すのに一役買っているかのようです。
オーケストラの奥行きや前後感、高さ表現に非常に優れており、グランカッサ(大太鼓)の圧力は全ての同曲ソフト中、最高レベルで収録されています。
位相特性や周波数レンジ、ダイナミックレンジの確保がこのステージ感や奥行き感に大きく影響するのは言うまでもありません。
数多く登場する各楽器のカラフルな音色の描き分けは、ノイズや付帯音がない事が求められるでしょう。

Eiji Oue 「Mephist & Co.」 


大植英次指揮ミネソタ管弦楽団の管弦楽曲集です。
レコード会社は米国のハイエンドオーディオメーカー、スペクトラムを主催するキース・ジョンソン博士のリファレンス・レコーディング社で、キース・ジョンソン博士は録音も担当しています。
位相特性を非常に重視するスペクトラムを象徴するような、非常に正確な位相特性を感じさせる録音で、奥行きや前後感、高さ表現などに正確さを感じさせます。
優秀録音が多いリファレンス・レコーディングの中でもトップクラスの音質のディスクと言えるでしょう。
よく聴くトラックは4、9で優れた奥行きや高さ表現に、ワイドレンジでダイナミックさが融合した現代クラシック録音の最高峰に位置する音質だと思います。
余りに周波数レンジ、ダイナミックレンジ共に広大なため、破綻せずに再生するのはかなり困難なディスクです。
S/N比や低歪みである事も大切で、ノイズや付帯音、歪みが多いシステムでは混濁が酷くて音にならない恐れもあります。
また正確な位相特性も重要で、位相が少しでもずれると、トラック4の「禿山の一夜」などは途端に奥行きがなくなったり、前後感がなくなったりする、オーディオファイルにとって怖くも挑戦のし甲斐のあるディスクだと思います。

Mahler 「Des Knaben Wunderhorn」


リッカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマーラー歌曲集「子供の不思議な角笛」です。
ソプラノにバーバラ・ボニーなどを迎えています。
非常にオーケストラの奥行き感に富んだ録音で、各ソリストの音像もコンパクト且つシャープに定位しており、オーケストラとの位置関係も完璧。
S席でステージ上のソリストの歌唱を聴くような絶妙なバランス、音像定位で収録されています。
ポイントは当然の如く、各ソリストの声の質感再現になります。
歪みや付帯音の多いシステムでは特にバーバラ・ボニーのソプラノが刺激的で聴くに絶えない質感になってしまいますし、位相特性の悪いシステムではこの広大な奥行きを感じるステージ感が再現出来ないでしょう。

Charles Dutoit 「Orff Carmina Burana」


シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団による、カール・オルフの大作「カルミナ・ブラーナ」です。
混声合唱、少年合唱、ソプラノ・テノール・バリトンのソリスト、大規模なオーケストラという大編成なこの曲は、オーディオにおいて最も再生の難しい曲と言えるかもしれません。
デュトワ&モントリオール響によるこのディスクは、奥行きや高さ表現、音場スケールの大きさ、解像度の高さなどで全てのカルミナ・ブラーナ盤中、最高の録音だと思いますが、その分、再生も非常に困難を極めます。
まず冒頭のフルコーラス部で殆どのシステムは歪んで耳障りな音を発してしまうでしょう。
位相特性が少しでも狂っているシステムでは混声コーラスの奥行きや高さも再現されないでしょうし、全ての音が混濁した耳障りで刺激的な音楽としか聴く事が出来ないかもしれません。
このカルミナ・ブラーナを歪みなくクリアに聴くには、位相特性や歪み率に優れた機材も必要ですが、それ以上にノイズや付帯音、歪みがなく、位相特性に優れたケーブルやアクセサリーの使用が不可欠になります。

以上、あなたのシステムは各ディスクとも、私がお伝えした通りの
音質が奏でられていますか?
私がお伝えした通りの優れた音質で鳴らない場合、必ずシステムのどこかに問題が潜んでいるはずです。
そんな問題の解決にACOUSTIC REVIVEのケーブルやアクセサリーをご活用頂ければ幸いです。

尚、私がよく使う「質感」という言葉を理解して頂くには、何よりも生楽器の音を聴いて頂くのがベストです。
響きの良いホールで一流の演奏を聴ければベストですが、極普通の
演奏や、大袈裟に言えば子供の演奏会でも充分に「質感」を捉えるための参考になるはずです。
何千回オーディオ装置の音を聴くよりも、たった一度でも生の音に触れる事が「質感」を捉えられる感性を養う事に繋がります。
ぜひとも生の音に慣れ親しんだ上でオーディオに上手く反映させて下さい。
ゲスト
投稿日時: 2008/3/21 14:53
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)(1)
リファレンス・ディスク(クラシック編)への感想
管理人K様、リファレンス・ディスク(クラシック編)のアップ、ありがとうございます。ジャンルを広く取りその分野の表現に的確なコメントを付けていただきありがとうございます。
そこで、個人的な感想と若干の音楽的な補足を付けさせていただきました。

まずはフランソワ・クープランのクラヴサン曲集ですが、よく聞きますとチェンバロは製作年代や製作された国、製作家により音質がまったく違うものです。フランソワは音楽一家クープラン家の中でも「大クープラン」と呼ばれ、18世紀初頭のフランス・バロック音楽を代表する作曲家です。その時代を代表する典雅で響きの柔らかい再生音で、しかも音量は小さめで聞くことをお勧めいたします。

次に小川典子さんの現在録音進行中のドビュッシー作品全集からの第2巻です。
スウェーデンのBISレーベルは北欧の良心的なレーベルで、大変優れたスタッフにより優れた録音のCDを輩出しています。この1枚も小川さんのピアニストとしてのダイナミックで繊細な描写能力、そしてスタインウェイのフルコンサートを完全に捉えきった優秀録音に挙げられます。
小川さんの演奏は紀尾井ホールで聴きましたが、冷涼な冬の教会に足を踏み入れたようなひんやりとした空気感と、ダイナミクスとスケールの大きい演奏が眼前で展開されます。特に最低音域がしっかりと打鍵されているか、ピアノ線の響きの1本の胴鳴りも見事に捉えられているかが再生のカギとなりそうです。左手の低音の力強さと迫力も素晴らしく、また繊細さも兼ね備えた名録音と言えます。

そして次は吉野直子によるハープ録音ですが、演奏会場では概してオーケストラの場合ですと埋もれてしまいがちな音量でも、小さなホールでのリサイタルでは芯のある基音と豊かに広がる倍音に身を任せると、気持ちも心も大変リラックスできる楽器です。まるでオルゴールのように紡ぎ出される豊かな倍音が伸びやかに空間に漂います。また指が弦をはじく瞬間まで鮮やかに捉えられています。

そしてカルミニョーラのバロック・ヴァイオリンを主体としたバロック・アンサンブルの録音です。現代のストラディバリなどの楽器は17世紀後半から18世紀中葉にかけて製作された楽器を、現代の大ホールでも響き渡らせることができるよう補強材を使用し大きな音量が出るように改良したものです。しかし、バロック・ヴァイオリンと呼ばれるものはそのような補強は一切なく、弦も羊の腸を使ったガット弦(現代はナイロン弦)を使用しています。その材質による音質の差は実際に聞いてみると歴然で、バロック時代のものは補強していないため張力が弱いことから音量が小さく、音色もよりひなびた印象です。
オーディオ再生の際に、このガット弦の音色が金属弦のようにヒステリックになってしまわないように注意しなければなりません。
また、このようなバロックアンサンブルの弦楽合奏は少人数なため、個々の奏者の集合体としての分離感や、芯を伴いながらも豊かに広がる空間表現が重要視されることが大切かと思われます。
ベニス・バロック・オーケストラは奏者がチェンバロを含めて全員が起立して演奏しています。その躍動感が楽音の立体感やエネルギー感として再生できるかもポイントでしょう。

以上、長くなりますので、印象と感想を述べさせていただきました。
ゲスト
投稿日時: 2008/3/22 22:47
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
リファレンス・ディスク(クラシック編)第2回

今回は実際に管理人Kさんが取り上げられたディスクについて、音質の点に着目して何枚か入手できたCDを聴いてみたい。

まずは、Fl:ジャック・ズーン、Cd:マーティン・パールマン、ボストン・バロック[テラーク]のCDから。
フルート協奏曲はすがすがしい清涼感のあるSN比の高い広い音場に、息継ぎまで明瞭に聞き取れるフルートがほどよい音像で中央に余韻を伴って見事に定位する。そしてその後方にしっかりと各楽器群がピシッと定位する。フルートの楽音も柔らで美しく伸びやか。カデンツァのソロの余韻とチェンバロの終始軽やかで典雅な響きも雑味がない。ノンビブラートの弦楽の見通しの良さが心地よい。
薄っぺらになりがちなピリオド楽器の弦楽だが、ほどよい厚みもあり安定感がある。横への広がりだけでなく、高さ方向へもほどよく音場が展開する。

次のジュピター交響曲は、奥に定位するティンパニの響きがほどよいスケール感を与え、ホールに染み入るトゥッティの楽音の余韻が美しく、エネルギーを伴って生きたように存在感を聴かせる。管楽器が弦楽器との空間で美しくさわやかに溶け合う音楽に高い品位を与えている。
聞きものの第4楽章では、左側の第1Vn、右側の第2Vnのかけ合いが対位法の音楽的な深さと立体感を生み出し、低弦群のほどよいふくらみもこの傑作交響曲に品格の高さを与えている。テラークの自然な良い面が出た優秀録音盤であると言えよう。


次に聴いたのが、ギュンター・ヴァント指揮による北ドイツ放送響による「展覧会の絵」[RCA]だ。
オーケストラ全体の録音音量レベルが低い。冒頭の「こびと」でのグランカッサが異様に突出してまるで大砲のような迫力である。いくら何でもこれはやり過ぎか。咳払いなどの聴衆ノイズも捉えられている。
各楽器の定位感や質感はライヴ録音のハンデを感じさせない。ハンブルクのムジークハレのホール残響音や木管楽器も美しい。小太鼓のロールも臨場感がある。また各楽器のソロの色彩が豊富で分離がよく、低弦の押し出しも十分である。
しかしあまりの打楽器との音圧の落差が激しく、オーディオファイルには難題を突きつけてくる。これは耳に心地よい優秀録音などではなく、再生困難録音盤と言えるかもしれない。ヘボくコンポーネントの完成度が低いシステムだと、支離滅裂な収拾の付かない音楽になってしまうだろう。オーディオファイルの腕とシステムが試されるCDと言えそうだ。またそもそもヴァントのいかにも足取りが重いドイツ的な音楽アプローチ自体が好悪を分けるかもしれない。併録のドビュッシーの方がその点オーディオ的な破綻は少ないと思う。

このCDはあくまでリファレンスであって、いわゆる優秀録音ではないことに注意が必要で、これは過去にも実は有名なものがある。それはサイモン・ラトルがベルリン・フィルの音楽監督としての記念すべき初公演で収録されたマーラーの交響曲第5番のライヴ録音CDである。↓
http://www.hmv.co.jp/product/detail/924178

この演奏のサイトでの一般評をご覧いただきたい。「音質が悪い」のオンパレードである。
実はそうではなく、EMI録音だから余計そう感じるのだが、上記の展覧会の絵と同様の再生困難盤なのである。このマーラーもちゃんと鳴らしてやれば、素晴らしく朗々とラトルのマーラー演奏を楽しむことができる。
いかに一般クラシック音楽ファンが、貧しいシステムで聴いているかが分かる実に面白い典型ではないか。この2枚がしっかり再生できれば、オーケストラ再生は合格と言っても過言ではないと思う。
管理人K
投稿日時: 2008/3/24 1:34
管理人
登録日: 2007/12/10
居住地:
投稿: 1907
解説ありがとうございます
シュテファンさん、詳しいご解説感謝致します。

オーディオファイルの方々に作曲家や演奏家、楽器などの詳しい説明を読んで頂きながら、更に音を聴いて頂けばより一層、音楽への造詣を深めて頂く事に繋がると思います。

ありがとうございます。
管理人K
投稿日時: 2008/3/24 1:40
管理人
登録日: 2007/12/10
居住地:
投稿: 1907
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
シュテファンさん、こんばんわ。

シュテファンさんが仰る通り、リファレンスディスクはどのようなシステムにおいても良い音で鳴るという意味ではなく、どちらかと言えば、そのリファレンスディスクが良い音で鳴ればそのオーディオシステムは問題ないという意味が強いと思います。

実は凄い演奏、凄い録音なのに再生側の環境が整わないせいで真価を聴き取ってもらえないというのは、演奏者にとっても製作会社にとっても悲劇ですね。

私が申し上げたチェックポイントを参考にオーディオシステムの追い込みにリファレンスディスクをご活用頂き、演奏者が真に伝えたいものを聴き取れるようになって頂ければ幸いです。
ゲスト
投稿日時: 2008/3/28 0:10
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
リファレンス・ディスク(クラシック編)を聴く最終回

まずは、
P:ランラン、Cd:ワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管によるピアノ協奏曲第2番(ラフマニノフ)。
独奏ピアノの哀愁に満ちた楽音がコンチェルト録音にしては大きいスケールで描かれる。後方に展開されるオーケストラのピラミッド構造の重層感が安定感を生んでいる。荒くなりがちなマリインスキーのオーケストラも、ここでは繊細で品位のある演奏で真のロシアの大地を思わせる荒涼さが良い。ピアノがオケに埋もれることなく終始手前でしっとりと歌われる。出来不出来のあるD.グラモフォンとしては理想的なコンチェルト録音であると思う。左手のピアノの低音やオケのチェロ・コントラバスもだぶつくことがない、堅固な低音表現である。

そして陰影を伴いしっとりとした緩徐楽章は艶のある明るめのスタインウェイと想像されるピアノとオーケストラの距離感・間合いが好ましい。乾き目の高音のトリルなどピアニストの特質だろう。それに清涼感のある弦楽が美しい。
第3楽章ではオーケストラの奥行きを深く感じさせる。シンバルなどタテ方向の高さや響きの深さが感じ取れる、広大なスケールのある素晴らしい録音である。


次は、
カルミナ・ブラーナ(オルフ) デュトワ/モントリオール響の演奏。
デッカ録音のこのコンビと言えば、フランスものをやらせたらご当地フランスのオケよりフランスの香りがするので有名である。ところがここではまさに真逆なとも思えるこの曲を取り上げているのが面白い。

春・酒場・恋愛をテーマに13世紀から14世紀の流浪僧や吟遊詩人によるラテン語の詩に鮮烈な曲を付けた、実にインスピレーションの固まりのような音楽であるカルミナ・ブラーナ。
この録音は大合唱と小合唱の対比や、混声合唱としての男女の描き分けや、独唱など聞かせどころが多い。テクストを追いながら聴くより、詩を頭の中にイメージさせ、透明で独特なリズム感と語るような歌唱に耳を傾ける曲かもしれない。
オーディオシステムには、合唱が個々の歌い手の集合体であると聞かせる高度な分解能が求められることが重要だ。
オーケストラと合唱が距離感をもって混濁することなく再現できるかもポイントだろう。録音はデッカお得意のマルチ録音らしい自然なプレゼンスと奥行きが表現されるべきものである。特にソプラノ合唱の透明感は秀逸だ。この高音は空間に伸びやかに美しく彩られる。非常に高度なアンサンブルが楽しめるディスクだ。


最後に、
現在大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督である大植英次指揮のミネソタ管による管弦楽曲集。
このCDは知る人ぞ知るの有名なもので、その存在は知っていたが聴くのは初めてである。
結論から言うと、出色のオーケストラによる超優秀録音CDである。
マスとしてのオーケストラ、個々の楽器の存在感が高度に比類のないレベルで録音されたCDだ。しかもHDCDヴァージョンである。
前に出るべき楽音はしっかり押し出され、奥行き深く演奏される打楽器、迫力ある金管楽器など、まさに等身大のオーケストラがオーディオルームの壁面全体に展開する。
個々の楽器のソロのリアリティも素晴らしく、音楽の飽和の中に完全に身を浸すカタルシスを体感できるだろう。管弦楽の醍醐味を心から堪能したい。
ダイナミックレンジや周波数レンジもダントツに広く力強い。身体いっぱいに音圧と空気圧を感じることができるアルバムだ。オーケストラの巧さも舌を巻くほどで、巨大な空間に身を任せるオーディオならではの楽しみを味わうことができるだろう。

以上であります。
ここまで読んでくださった読者の皆様に深く感謝申し上げます。
タカボー
投稿日時: 2008/4/29 9:38
一人前
登録日: 2008/2/18
居住地:
投稿: 82
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
管理人さんこんにちは。

今回紹介していただいたリファレンスソフトを何枚か所有してますが特にパガニーニのヴァイオリン協奏曲とオルフのカルミナブラーナをシステムのチェックに使ってます。

パガニーニではヴァイオリンの音色をいかに質感良くリアルに再現できるか。問題があるととたんにギスギスした音色になるのでわかりやすいです。

オルフのカルミナブラーナは非常にスケールの大きな曲なのでいかに音場を広く再現しつつ一つ一つの楽器やコーラスを混濁させずに浮き立たせるか。

いずれのソフトも再生困難ですが、自分はいかに音量を上げても音が破綻せず気持ちよく聴いていられるかを心がけて日々精進しています。
ゲスト
投稿日時: 2008/5/2 4:30
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
タカボーさん

ハーンのパガニーニとシュポアのヴァイオリン協奏曲は、録音が優秀なため、比較的たいがいのシステムでほぼ良い音で再生されています。

そこで問題はヒラリー・ハーンのソロヴァイオリンですが、実際の東京オペラシティコンサートホールでのリサイタルでは前評判の音楽性や質感と若干異なって聞こえました。

原音はより艶やかで高音でも金属的にヒステリックに鳴ることはありませんでした。むしろ繊細さが際立っていたと思います。

このコンチェルトは後発のシェーンベルク&シベリウスの協奏曲よりもディテールの表現が細やかで優位に立ち、左右のプレゼンスや打楽器の奥行き感もよく収録されていますね。
CD再生に当たっても、ソロ・ヴァイオリンの金属的な響きのない滑らかな音質、凝縮された隙のないテクニック、イタリアの明るい風土を感じさせる明るい表現が成し遂げられれば合格なんじゃないでしょうか。

ハーンはまさにまだまだ伸び盛りの演奏家なので、機会があったら演奏会で生ライヴを聴かれ、自身の再生音と検証してみることをお勧めします。
タカボー
投稿日時: 2008/5/2 19:27
一人前
登録日: 2008/2/18
居住地:
投稿: 82
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
シュテファンさんこんにちは。
いつもいつも的確で明快な投稿拝読させてもらってます。

シュテファンさんの仰るとおりヴァイオリンの金属的でない滑らかな音色が再現できるよう日々悪戦苦闘しております。
自分はあまり演奏会に行ったことがないのですが自分なりの音を目指してます。

まだオーディオを趣味として本格的に始めて数年の若輩者ですが少しでもいい音を出せるよう皆さんと精進していきたいです。

管理人K
投稿日時: 2008/5/3 21:38
管理人
登録日: 2007/12/10
居住地:
投稿: 1907
Re: リファレンス・ディスク(クラシック編)
タカボーさん、こんばんわ。

リファレンスソフトをさっそく使って頂いてるようでありがとうございます

ヒラリー・ハーンのヴァイオリンの質感再現やカルミナブラーナの大コーラスが破綻せずに再現出来れば殆どのソフトは問題なく再生出来るようになるはずです。
頑張って下さい。

今後はシュテファンさんやmaroさんと一緒に演奏会やライヴに行かれて実際の生の質感を体験される事をお薦め致します。

タカボーさんはとても素直で良い感覚、感性を持ってられますからきっと生音の質感を上手くオーディオに反映させて、より質感の高いオーディオ再生を実現してくれると思います。
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