メイン [00-06]アナログレコード モービル・フィデリティ社の騒動で考えたこと | 投稿するにはまず登録を |
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Baby Driver | 投稿日時: 2022/10/16 11:25 |
新米 登録日: 2022/4/22 居住地: 投稿: 19 |
モービル・フィデリティ社の騒動で考えたこと 皆さん、こんにちは。
もう古い話題かもしれませんが、そしてあまり気持ちのいい話ではないので恐縮ですが、モービル・フィデリティ社が現在非常に立場を危うくしているのはご存知でしょうか。3ヶ月ほど前、同社アナログ盤の主力シリーズOne Stepの能書きに偽りありということを暴いた方がアメリカ本国に現れたのです。日本では一部ブログなどを除きほとんど報じられていないようですが、この夏海外のオーディオフォーラムで一大スキャンダルとなり、一般紙であるワシントンポストまで報じる騒ぎになってしまいました。 One Stepは確かにマザー・ファーザーの工程を省いており、故にOne Stepと命名されているのですが、問題視されたのはオリジナルマスターテープから直接ラッカー盤を起こしているかのように説明されていたことでした。実はカッティングの際、テープからDSDファイルに変換されたMoFi独自のデジタルマスターが使われていたのです。「信頼できる情報源」をもとにYouTube動画で疑惑を指摘したマイクさんという方はレコードショップのオーナーで、YouTuberとしても一部で有名な方でした。その時点ではあくまで疑惑であり、オーディオファイル界隈の反応も様々だったようです。その後興味深いことに、MoFiの開発担当者が社長に無断でマイクさんを招いて社内のツアーおよびエンジニアのインタビューをする機会を与えました。彼らも率直に疑惑を認め、それどころかDSD変換はOne Stepが登場する遙か前の2011年に6割に達していたということもわかってしまいました。One Stepに限って言えば、ビル・エヴァンスのSunday at The Village Vanguard以外はデジタルマスターが使われているそうです。MoFiからはその後正式に謝罪声明がありました。 多くの方がオールアナログと信じていましたから、件のフォーラムでは数分おきにページが更新される荒れっぷりでした。8月には訴訟にまで発展しています。MoFiが曖昧な表現を使っていたことは確かですが、公にはっきりオールアナログだと宣言した形跡はなかったような気がしたので私としてはちょっと大げさかなと思っていました。しかし、どうやらこれまでカスタマーからの問い合わせには「デジタルプロセスは一切ない」と虚偽の返答をしていたようなので、皆さんの激烈な反応も無理もなく、訴訟も仕方ないことでしょう。 現在MoFiのウェブサイトではそれぞれの製品に関してより正確かつ詳細な説明がなされており、今後のOne Step盤や他のシリーズに同封される解説もアップデートされていくようです。 なぜこの件がここまで大きな問題になったのかというと、それはもちろん「オールアナログこそ正義」というような考え方がアナログ派のオーディオファイルのあいだにあるからでしょう。かくいう私も「そんなものかな」となるべくアナログマスターからのカッティングを謳ったオプションがある限りそちらを選んできました。 MoFiの製品について言えば、個人的に音質の賛否両論(とジャケットのデザイン)から食わず嫌いで敬遠しており、昨年ポール・サイモンのStill Crazy After All These YearsのOne Step盤が出たときに試してみたのが最初でした。決して悪い音ではないのですが、期待が大きすぎたのかもしれません。以前に持っていた英国オリジナル盤のほうが心躍る音に感じられました。こちらはちょっとノイズが多く手放してしまいましたが。One Step盤の音質は優秀だが、あの値段で購入するほどだっただろうか?というのが当時の率直な感想です。 この体験と今回の暴露から、やはりデジタルプロセスは音楽から旨味を削いでしまうのでは?というますますの疑念が湧く一方で、デジタルマスターを使ったレコードも全然悪くないじゃないかという発見が交錯する複雑な思いに至りました。 ワシントンポストの記事でも、著名なエンジニアのバーニー・グランドマン氏が「デジタルからいいレコードができないわけではないが、オリジナルのテープを使ったときほど自然にはならない」とコメントしていますし…。 ただしデジタルに対する私自身の偏見が少々極端だったのは、ここ2〜30年くらいの新作レコード(ほぼ間違いなく録音あるいはマスターがデジタルでしょう)をよく聴くのと、それらのレコードが70年代頃のものに比べあまり音質がよろしくないことが重なってのことだとは思いますけどね。 One Stepの話に戻りますと、私自身上記の作品しか聴いていませんし、ボブ・ディランの作品はシリーズの他のものよりもよいという評判をどこかで見たりもしたので一概には言えないのかもしれません。前述のマイクさんもMoFiの製品については絶賛していて、それ故に動画では心苦しそうなのが印象的でした。ただ、やはり企業倫理的にいかがなものかというのは残ってしまいますが。 どうも後味悪い話ですみません! これを機に、他社もより透明性の高い記述にシフトしてほしいものです。 ちなみにオールアナログ(AAA)をはっきり謳っており、なおかつ信頼できるレーベルは、Analogue Productions、Speakers Corner、Acoustic Sounds、2019年以降のBlue Noteリイシュープロジェクトあたりが思い浮かびますが、どなたかほかにご存じでしょうか? ほかにもエンジニアでは、Kevin GrayやRyan K Smith、上述のBernie Grundmanの名前があると安心できます。 |
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