オリジナル盤vsリマスター盤第６回はアート・ペッパー「ミーツ・ザ・リズムセクション」です。

このアルバム、当時ウエストコーストジャズの第一人者であったアート・ペッパーがイーストコーストを代表するマイルス・デイビスのリズムセクションと競演したもので、発売は１９５７年、実に５０年以上も前にもなる訳ですが、名手ロイ・デュナンの優れた録音により新録も敵わないほどの鮮度とリアリティを感じる素晴らしい音質で、アート・ペッパーも録音時薬物中毒だったとは思えない神がかり的なプレイで「モダンアート」と並んでニュアンス豊かなサックスの音色で最も優れたプレイを披露してくれています。



比較したのは日本再発盤、アナログプロダクション１８０ｇ重量盤、アナログプロダクション４５回転重量盤、米国オリジナル盤のステレオ４種類と、日本再発重量盤、英国オリジナル盤、米国モノラル盤のモノラル３種類の合計７枚です。





日本再発盤







まずは日本盤から。この盤はELPEAMANさんによれば９０年代に新星堂から限定でプレスされた再発盤だそうです。
音質はアート・ペッパーのサックスが左チャンネルに程よくクローズアップされ中々いい感じです。リズムセクションはかなり控えめで薄く感じますが、歪み感もなくすっきりした音でアート・ペッパーのサックスを聴くにはまあまあ楽しめると思います。

アナログプロダクション社製１８０ｇ重量盤







次に米国アナログプロダクション社から再発された１８０ｇ重量盤です。先程の日本盤がとても薄く感じる程、厚みのある音で驚きます。各音像も音場も厚みがあり濃密です。サックスも厚みがあり、より有機的でリアルな音色です。なんといっても違うのがリズムセクション。日本盤とは比べ物にならない程、力強く厚みのある演奏になってます。
この盤は既に生産は完了しているようですが、まだ市場には在庫が多くあるようですので現在簡単に入手出来る盤では最も優秀な音質ですので見つけたら即入手される事をお薦め致します。

アナログプロダクション４５回転重量盤







次に同じくアナログプロダクション社から世界限定１０００枚でプレスされた４５回転重量盤です。
同じアナログプロダクション社の１８０ｇ重量盤と比べても立体感や切れがまるで違うのが一聴して判ります。
音場の透明度も上がり、ドラムスの高さまで見えてきます。
リズム隊は実に強力強靭。
ベースのポール・チェンバースやドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズもまるで握力や腕力、運動神経も向上したかのような立ち上がりや切れのよさ、力強さを感じます。
レッド・ガーランドのピアノも艶やかで粒立ちの良い音色になっていますし、アート・ペッパーの音像もよりクローズアップされ細かいニュアンスが明確になりリアリティが増しています。
現代録音を遥かに凌駕する立体感と切れ味に唖然とします。

米国オリジナル盤







STEREO盤の最後は本命米国オリジナル盤です。
アート・ペッパーのサックス音像は最も密度が高く、いい意味で艶かな音色です。アート・ペッパーのサックスの音はこうであったであろうと思わせる自然さもあります。
リズムセクションは４５回転重量盤ほど強力さはありませんが、やはり自然でこれが本当だろうと思わせます。
ピアノの音色もより艶やかで、いい演奏だなと思わせてくれる音質です。

という事で今回の順位は

１、米国オリジナル盤
２、アナログプロダクション４５回転重量盤
３、アナログプロダクション１８０ｇ重量盤
４、日本再発盤

です。
個人的には４５回転重量盤の圧倒的な透明度や立体感、切れの良さなども魅力を感じますが、自然でアート・ペッパーの演奏の魅力を最も伝えてくれるのはやはり米国オリジナル盤だと思います。

今回も参考までにモノラル盤の比較も行いました。

日本再発盤







この盤はELPEAMANさんによると、ビクターから９０年代に再発されたもので日本屈指のマスタリング・カッティングエンジニアである小鉄徹さんがカッティングを手掛けたものだそうです。
音質は少々ギラギラしていてどこか味付けを感じる音質です。
厚みなどにアナログの良さは感じるのですが、どこかケバケバしさを感じてしまいます。

英国オリジナル盤







英国で当時プレスされたオリジナル盤です。
日本再発盤と比べるとずっと自然で穏やかな音質です。
日本再発盤にあったギラつきやケバケバしさがなく、きちんと楽器の音が自然に再現されています。
幾分薄さや大人しさは感じますが、自然でいい音だと思います。

米国オリジナル盤







厚みとエネルギーに満ちた素晴らしい音質です。
STEREO盤のような広大な音場や立体感はありませんが、厚みのある渾然一体となったリズムセクションをバックにアート・ペッパーのサックス音像が中央に立体的に浮き上がります。
そのサックスの音色もSTEREOの米国オリジナル盤と比べても極めて軟らかく柔軟なニュアンスでこれがアート・ペッパーのサックスだと思わせる感動的な音色です。

今回のモノラル盤比較もマスターテープ保有国の優位性と音作りのお国柄の違いを感じさせる結果となってしまったようです。

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パコさん、こんばんわ。

>オリジナル盤主義のコレクターが陳腐に鳴らすより良いのではないかと思いますが、いかがでしょう？

だと思います。
パコさんのシステムがしっかり追い込まれた状態であれば、下手なシステムで鳴らす４５回転やオリジナル盤よりも優れた音質で鳴っているでしょうし、それこそCDですら陳腐なシステムで鳴らすオリジナル盤よりも良い音で鳴る可能性は高いでしょう。

オリジナル盤などはコレクター的価値も高い訳ですが、レコード盤は鳴らして何ぼの世界です。
歴史的名車も博物館に飾っておくだけでなく優秀なドライバーが実際に走らせて初めてその真の価値が判るのと同じで、優れた装置で鳴らして初めてオリジナル盤の真の価値が判ると思います。
投資目的で購入されている方なら仕方ありませんが、オリジナル盤は出来るだけ良い状態で鳴らしてやって欲しいものです。

管理人さんこんにちは。　
先日はアートペッパーの比較試聴会に参加させてもらいお世話になりました。

さまざまな盤を聴かせていただき改めてオリジナル盤のすばらしさを知ることができました。
４５回転盤も音に切れがありすごかったですがオリジナル盤を聴くとどこか作為的に感じられオリジナル盤が一番自然に心地よく聴くことができました。

日本再発盤はもっていたのですが試聴会後４５回転盤を購入でき、
自宅で聴いてみると日本盤よりはるかにすばらしいですね。

自分のシステムで聴いてもその違いははっきり現れ、音の切れや実在感、音場の広さなど比べるのがかわいそうなくらいでした。

あらためて今回の試聴会に参加させていただきありがとうございました。

管理人Ｋさん，こんにちは。アート・ペッパー「ミーツ・ザ・リズムセクション」の比較試聴会お世話になりました。

私が海外サイトでレコードを購入するようになったときには，アナログプロダクション４５回転重量盤は販売終了後でしたので，仕方なく１８０ｇ重量盤を購入しました。

このレコードの場合，米国オリジナル盤のバランスのよい再生音に最も魅力を感じました。しかし，４５回転盤のもつ厚い再生音にも心惹かれるものがあります。どちらとも是非手に入れたいと思いました。

しかし，それ以上にＫ邸のシステムがさらにレベルアップしていることに驚かされました。バランスケーブルのプラグをアコリバ製に変えただけということでしたが，にわかには信じられませんでした。

最近忙しくてなかなかオーディオに取り組むエネルギーが不足していたのですが，おかげさまでまたやる気がわいてきました。まだ行っていないプリ−パワー間の線材・プラグ交換やRWL-3の導入など夏休みを利用して実行していきたいと思います。

タカボーさん、こんばんわ。
先日は遅くまでお付き合い頂きありがとうございました。

リズムセクションの４５回転盤入手されたのですね。
もはやプレミアがついている希少盤をよく入手出来ましたね

４５回転盤のシャープで切れ味の鋭い立体感に溢れる音は、タカボーさんのクレモナではかえって効果的に作用するのではないかと思います。

今後も素晴らしい演奏・音質のレコード盤を聴かれて行って下さい。

PS、そういえばnorizouさんがアナログシステム導入を検討中みたいです。
タカボーさんが現在使用中の機材などを推薦させて頂きましたので、宜しかったらタカボーさんなりの使用感などをnorizouさんにお伝え頂ければ幸いです。

宜しくお願い致します。

ケミさん、こんばんわ。
先日は遅くまでお疲れ様でした。

線材やプラグ交換はぜひ行ってみて下さい。
雑身やピーキーさが更に減り、厚みや生々しさが向上するはずです。
システム自体のクオリティを更に向上させれば１８０ｇ重量盤でも下手なシステムで聴くオリジナル盤や４５回転盤よりもアート・ペッパーの魅力を充分に堪能出来るようになるはずです。

管理人さんこんばんは。

リズムセクションの４５回転盤はかなり前から売切れだったのですが先日の試聴会後、自宅に帰ってアコースティックサウンドのホームページをのぞいていたらなぜか在庫有になっていたので即購入してしまいました。

残念なのは新品なのに最初の曲の一分くらいにわたってノイズが入っていました。
クリーナーにかければ取れるかもしれないけど。

それでも楽曲はすばらしく聴き応えのあるアルバムですね。

あまりジャズ向きではないとよく雑誌に書かれているクレモナですがアートペッパーのサックスなどなかなか味わい深く、陰影感と言いましょうか、奥深さを感じられます。

自分としてはなかなかジャズも楽しめる音になっているのではと勝手ながら思ってます。
管理人さんの音には遠くおよびませんが。

また機会がありましたらよろしくおねがいします。

管理人Ｋさま

遅ればせながら、先日はお世話になりました。我が家で聴くのとは別次元のペッパーの演奏を楽しめました。ランキングはやはりＫさんと同様の感想です。

私持参の国産ステレオ盤は見事にリズム・セクションが遠くにいました。我が家で聴く以上な違いが出ました（泣）。ＵＳモノ盤は「これだ！」というペッパーのアルト・サックスの音色でした。でもステレオ盤は見事でしたね"Stereo Records"オリジナル、ぜひ私も入手したいです。

そしてケミさんも書かれているように、Ｋさん宅の音の変化、特にアヴァロンがパワフルに変貌したことに驚きました。プラグ恐るべし！ですね。脱帽です。

５０年代Jazz、６０年代Rockを中心に聴く私としては、オリジナル・レコードの優位性を信じて疑わないのですが、当然例外もあると思っています。使っているヴィニールの質もあるでしょうし、そして何よりもエンジニアのセンス、これがいちばんかと・・・

次回はRockかと思いますが、ネタを増やしておきますね。よろしくお願いします。

タカボーさん、こんばんわ。

リズムセクションの４５回転盤入手出来たとの事、超ラッキーですよ
この盤は全世界１０００枚限定の発売でかなり前に売り切れてしまっていて、今もオークションなどで出てきても１万５千円以上の値が必ず付いてます。
タカボーさんが観た時がACOUSTIC SOUNDSにたまたま入荷した時だったんじゃないでしょうか？

>残念なのは新品なのに最初の曲の一分くらいにわたってノイズが入っていました。
>クリーナーにかければ取れるかもしれないけど。

もしかしたら、そのノイズはプレスミスが原因かもしれませんね。
今度会う時にでも持ってきてみて下さい。
サービスで超音波クリーニングとバキュームクリーニングをしてみますよ。

>自分としてはなかなかジャズも楽しめる音になっているのではと勝手ながら思ってます。

だと思いますよ。
ただ音がデカイだけの突撃ラッパ的JAZZ喫茶サウンドの大型ホーンシステムなんかよりもクレモナの方がずっとニュアンス豊かなJAZZサウンドが楽しめると思います。
特にアート・ペッパーなどは繊細なサックスのニュアンス再現が肝になりますからね。

>管理人さんの音には遠くおよびませんが。

そんな事はありませんよ。
ぺッパーのサックスの軟らかさや繊細さなどはタカボーさんのシステムの方が上手く再現されるんじゃないでしょうか？
私は今もいかにウエストレイクBBSM15Fから繊細で軟らかいペッパーのサックスのニュアンスが出せるかに神経を注いでいます。
軟らかさと切れの良さという相反する要素の両立、これはオーディオ、そして弊社の製品作りも含めて永遠のテーマですね。