皆さんこんにちは。
UE社のTriple.fi 10 Pro用にケーブルを作成していただきましたので、レポートさせて頂きます。
イヤホン側の端子以外は単線が2本のRHC-2.5HS-S相当で、長さは1.5mです。

さて、まず何故アコリバ単線でわざわざイヤホンリケーブルなのか、という疑問を持たれる方もおられるでしょうが、
これは、集合住宅住まいでスピーカーが満足に鳴らせず、首の怪我でヘッドフォンの装着も不可能という事情と、
USB-1.0SP、LINE1.0R、RUI-1、POWER STANDARDなどで改善されていく音に感動し、音を発する機器の直前までアコリバにして聴きたくなってしまったという理由からです。

無理を承知でKさんに作成をお願いした所、単線なのでイヤホン用の小さな端子にはハンダ付け出来ない可能性があるとしながらも、調査を引き受けて頂くことが出来ました。
そもそも10proをベースに選んだ理由の一つに、各社からケーブルが沢山発売されているので、恐らく端子の入手が容易だろうと思っていた事が挙げられるのですが、
これが間違いだったようで、最終的にKさんがわざわざ都内の須山歯科まで出向き、イヤホン用端子を譲り受けて来て下さいました。また、その端子は驚くほど小さく、ケーブルの導体よりも細く狭かったようで、職人さんにも多大なご苦労をおかけしました。お二人には大変感謝しております。

このような経緯で、作成を依頼したのが今年5月、完成したのが6月で、その後オーディオに触れない時期がありましたが、その間も鳴らし込み続け、計500時間以上は音を出しているので、恐らくエージングは完了していると思われます。

上記以外でベースに10proを選んだポイントには、以前所有していてリケーブルも経験していること、いわゆるSHURE掛けと呼ばれる、ケーブルを耳の上に通す装着方法をしなくても着けられることが挙げられます。特に単線のSHURE掛けはまず不可能なので、そういう意味では10pro一択でした。


前置きが長くなりましたが、音や機能性のレポートに入ります。視聴にはフェーズテック社のEPA-007を使用しています。

リケーブル前の10proの特徴としては、ドンシャリ気味、派手で刺さる直前の高音域、少し引っ込んだ中音域、量は出ているが緩慢な低音域、横に広く縦に狭く前後への拡がりは殆ど無い音場、薄く膜のかかったような曇った音など、3ドライバのBA型の走りということもあり、今聴くと各音域の繋がりが不自然で、定位もかなりぼんやりしています。もうお分かりでしょうが、あまり好きな機種ではありません(笑) 確かに電子音楽等を聴くと特有の疾走感があり、これを気持ちいいと感じる人が多いのも理解できるのですが、楽器の音の嘘くささが受け入れられません。有名所の他社製リケーブルをいくつか試しましたが、高音や低音の伸びは良くなるものの、音の嘘くささや違和感は解消されず、結局手放してしまいました。

このような前提があるので、今回は期待しつつも、あまり期待し過ぎないようにしていたのですが、アコリバリケーブル使用の効果は劇的でした。特に改善されたのが、音の立体感、厚み、音場です。前述の通り、ベタッと平面的で横に広いだけの音場が、耳に入っているドライバの大きさを遥かに超えた、ヘッドフォンのような音場に変化しました。横方向が一番広いのは変わりませんが、縦や前後の方向の閉塞感が無くなったせいか、立体的に広く感じられます。楽器の音や響きも自然になり、特に弦楽器や、金管楽器などノーマルケーブルの10proがお世辞にも得意とは言えなかった楽器を、大変気持ちよく聴くことができます。特にチューバなどは、イヤホンから出ている音とは思えないくらい、分厚く実在感のある鳴り方をします。不思議なのは、ドンシャリ気味の機種固有の音のバランスは当然変わっていないにも関わらず、そのような点が全く気にならなくなったことです。ただただ、気持ちよく音楽に集中することが出来ます。他の(特にエージング前の)イヤホンを聴いて頭が痛くなっているような時でも問題無く聴けますし、むしろ聴いている間に頭痛が治まっていきます。自分でも驚きますが、こんな経験は他のイヤホンではしたことがありません。手持ちのアコリバ製品の中では、RUI-1と同じかそれ以上の改善効果がありました。


このように音質的には大満足ですが、取り回しは良い悪いではなく、困難なレベルです。購入前にKさんいもご忠告をいただきましたし、それを承知で作成をお願いしたので、個人的には問題ありませんが、ヘッドフォンと違い、10proは本体が10数グラムしかないので、単純に単線が固くて、という次元ではない難しさがあります。装着のポイントは、耳にフィットするイヤーチップを見つける、ケーブルをクリップで服に固定する、楽に後傾姿勢を維持出来る椅子に座る、聴いている間は動かない(笑)の4つです。個人的にイヤーチップは本体に付属のコンプライを逆挿しするのがベストでした。装着に関しては普通のイヤホンの数倍の手間がかかりますが、一度音楽を聴き始めてしまえば気になりません。これも音の良さのなせる技だと思います。


長くなってしまいましたが、以上でレポートは終了です。
ケーブル作成をお願いする前は不安もあったのですが、消去法で選んでいたイヤホンでの音楽鑑賞を心から楽しめるようになりました。
恐らく興味のある方は殆どいないと思われますが、もし自分と同じような環境の方がいたらと思い、詳細に書かせていただきました。
最後まで読んで下さった方、ありがとうございます