自分は普段はスピーカーにfocalの布カバーを被せてます。嫁がカーテンを開けるので。仕事から帰るとPOWER SENSUAL MDの2本目が届いてまして、酒だけ作って、とりあえず繋いで音が出るかだけチェックしました。サランネットと布カバーの下から、アンプはまだ冷たいのですが、暖かい、一音一音が手を取りあったような、ピアノの音が溢れてきました。2本目を買ってよかった〜。ホロヴィツでしたっけ、ピアノは打楽器だが打楽器でないように弾くのが本物のピアニストだって。打楽器であるが打楽器でない、違う音が違う音と優しく繋がっていました。





皆さま、こんにちは。

POWER SENSUAL MDの2本目を導入しました。今回は電源ケーブルの長さを1.5mに、また一本目同様にアースを浮かせてもらいました。結論を言いますと、また良くなりましたが、導入前は、同じ効果のアイテムを加えてみて、少なくとも1+1＝2と相応の効果が加算されるのか、少し心配ではありました。


☆ヴァーチャルアース&ノイズリデューサーよりも

POWER SENSUAL MDを2本繋いでみると、テロスのGNR3.1miniを使った時のような深みのある音になりました。POWER SENSUAL MDの1本目は躍動するエネルギー感、2本目は深淵に誘います。肩まで音に包まれ、没入感がハンパないです。2本目の変化は1本目よりも渋いもので、奥深いところに触れてきます。どこかのコピーじゃないですが、本物のimmersive soundです。実は今はボリュームを上げられず、おまけに、うちのアンプとスピーカーはそんなに小音量が得意でもないのですが、それでもPOWER SENSUAL MDは音楽の深いひだを示すのです。これって凄いことだと思います。POWER SENSUAL MDって、言い訳の要らない、絶対の装置なんですよ、きっと。村上龍がかつてアルチュール・ランボーの詩は地球が滅亡しても存続するって評していましたが、POWER SENSUAL MDにはそんな絶対性を感じますね。他の機器がノイズで煩くても、部屋の調整ができてなくても、音楽を届けるケーブルなんです。

テロスのGNR3.1miniは、QNR3.1と一緒に2週間ほど試聴させていただき、付けたり外したり、電源の取り口を試しましたが、POWER SENSUAL MDの2本目のほうが音質改善効果が高いと予想しましたし、実際に間違いなかったと思っています。今よりもボリュームを上げられるようになれば、POWER SENSUAL MDと共に音の世界に消えていくことができると思います。また、1本目でも心臓に低音がどんどん届いてました。2本目はきらきらの高域の音の粒が胸の前で弾けるようですが、これは低域の懐がさらに広がり、音が深く暗く沈み込んだことによって、図と地のコントラストが明瞭になった効果かもしれませんね。試聴に使ったのは、まあ毎日聴いているのですが、Simeon ten HoltのCanto Ostinatoのシンセサイザー版です。二カ月前、正月の真夜中、ブレーカーを落とした暗がりの中でテロスを試した時、その音と音の狭間の闇の深さに、この機械は素晴らしいなと感じました。ただ、POWER SENSUAL MDの2本目は同じだけの変化量を集合住宅で昼間に稼ぎ出しています。再度強調しておきますが、ボリュームを絞ると音が潰れがちなシステムでも、です！


☆何百万の部屋よりも

自宅のマンションで調子に乗って音量を上げていたら、脅迫状？が届いたので、現在、引っ越しを画策しています。で、防音室を作るしかないと思い、いそいそ試聴に行きました。防音と壁面の加工による調音で、かなりの値段でした。

合計二時間くらいの試聴の最後にシメオン・テン・ホルトの上記の作品を視聴しました。いくつかのロックと楽器の数が少ないものでしたらまだよかったですが、テン・ホルトや他の作曲家の交響曲では率直にいって大した音ではなかったです。音がでかいだけで、立体感に乏しく平版で、スピーカーのユニットから音が離れていなかったです。窓ガラスを吹き飛ばすくらいの大音量でも音が破綻しないと言いたかったのでしょうが、破綻はしてなくても、芸術の再現性は低かった。最後のテン・ホルトを聴いている時に顔を見ると、一言、「これは難しい音源ですね」と。あー、白けるなあ。今の家では不可能なボリュームでCanto Ostinatoを聴かせていただけたのは感無量ではありましたが、音が分離していないのは明白でした。音楽は夜空のconstellationのようなもの。大きな絵を描きながら、一つ一つの音が違う光りを発しないとね。ホロヴィツ(?)を反復すれば、打楽器だけど、打楽器でない。打楽器でないけど、打楽器なんでしょう？

この「難しい」っていう表現ですが、私は以前にも聞き覚えがあります。あるショールームにプロジェクターとAVアンプの試聴に行った時でした。デヴィッド・リンチの『インランドエンパイア』のBDを再生してもらいました。店員さんは「これはプロジェクターには難しい映像ですね」と呟き、UHDを試聴できるシステムを勧めてくれました。まったく馬鹿馬鹿しいにもほどがある。

自分が愛する作品の音を引き出さないオーディオ装置は、無意味な鉄グズでしょう。映画監督の企図した絵を映さないならば、何もプロジェクトしていないのも同然だ。「難しい」作品の魅力を語れないならば、何の為の《プロ》なんだ。ただのぼったくりじゃないか。


☆芸術、アコリバ、瞑想

POWER SENSUAL MDは応えます。2本目を繋いで数日後、ちゃんと聞こうと再生した瞬間、左スピーカーの内振りを調整しました。私は適当な人間なのでそれきりですが、このケーブルはちゃんとスピーカーの角度を教えてくれ、進むべき道を示してくれます。何でも大音量で鳴らすことができて音楽を破綻させることはないというプロが「この音源は難しい」と告白する作品を、音量が出せずアンプのs/n比が低下しているだろう逆境の中であっても、深い瞑想に誘ってくれる。曰く説明し難いある何らかの理想の音を聴きたい私の一番の味方は、POWER SENSUAL MDで、これを中心に置いておけば、きっとその次元に到達すると確信できる。アコリバの電線は「何も引かない、何も加えない」で、言い訳もせずに、道筋を示し、私の精神には瞑想の時を与えてくれる。

今の状態でも、音楽に肩まで浸かれました。次は、背中まで全身で音楽に浸かって、忘我の果てに行けるように、まずは瞑想室を含めた新居のプランを練りたいと思います。